人生の真実 / グレアム・ジョイス

 

 

 

面白かった!

★5

 

 

あらすじ

 

この子はあたしたちみんなで育てるよ。よそにはやらないよーーー千里眼を持つ女家長マーサの決断により、赤ん坊はヴァイン家の8人の女たちに育てられることになった。フランクと名づけられた男の子は、大戦の残した傷跡から立ち上がろうとする町で、風変わりな一族に囲まれて大きくなってゆく。彼だけの秘密の話し相手、<ガラスの中の男>とも一緒に……。現代英国幻想小説界の巨匠が鮮やかに描き上げた、生と死のさまざまなかたちを見つめる家族の物語。世界幻想文学大賞受賞作。

 

 

 

感想

 

この小説を読み終わった今、言えるのは「素晴らしかった」という一言に尽きる。

これ以外にふさわしい言葉が出てこない。

 

あらすじにもある通り、これは完全に「生と死」、そして「家族」の感動的な物語だったのだと、読み終えてから気づく。

 

幻想小説でもある本書は、序盤から不思議なことが日常の中に溶け込んでいる。

家長マーサが未来を予知する能力があるからだ。

しかし、その予知の仕方がまず風変わりで、マーサの予想していないときに必ず誰かが、彼女のもとを訪ねてくるのだ。家の扉をノックして…。

その訪ねてくる「誰か」が、なかなかに得体の知れない人々なのだ。彼らの来訪から、マーサは近い将来に起きることに気づかされる。

 

マーサには7人の娘がいる。その娘たちも実に個性派ぞろいである。

死体のような夫を持つ、長女アイダ。

スピリチュアリストの双子の姉妹、イヴリンとアイナ。

ダンケルクに行った夫を持つ、オリーヴ。

農場に嫁いだ、ユーナ。

知性溢れる、ビーティ。

そして実に風変わりな末の娘、キャシー。

その末っ子キャシーがアメリカ兵との間に産んだ子供が、フランクである。

 

一家の中で、マーサと並んで不思議な力を持っているのが、キャシーとフランクで、とりわけフランクは鋭く、五女ユーマが嫁いだ農場で<ガラスの中の男>と出会う。

 

最初読み始めは、いったい何が起こるのかと思いながら読んでいた。幻想文学というジャンルから、奇天烈なことが次々と起こる小説なのかと思っていたのだ。

しかしこれがまたちょっと違う。

描かれるのは、時としてマーサを、時としてフランクを、時としてキャシーを中心にして、そこを取り巻く家族たちの人生に一つ一つ、スポットライトが照らされる。

時にダンケルクから帰還したオリーヴの夫ウィリアムに。そしてまた、知性派のビーティと彼女の恋人バーナードに…。

そうなのである、これは最初にも書いたように、「家族の物語」なのである。

 

そうして読み進めた最後の最後、フランクが放った一言に、この物語のつながりが見えた気がして、感動して、そして寂しくて、嬉しくて、泣けてしまってしょうがなかった。

本当に素晴らしいという以外にはない読書体験をさせてもらった。

実に良かった。

残念ながらこれが絶版になっていることに驚き…。

東京創元社さん、早く文庫化にしてください…。

 

あんまりまとまりのない感想だったけど、それではまた。