人間と象徴(上) / ユング

 

人間と象徴 上巻―無意識の世界

人間と象徴 上巻―無意識の世界

 

 

非常に面白かった。胸に突き刺さる言葉の数々。おもわず付箋を貼る手がとまらくなる…w

と、同時にある意味ぼんやりと不安を感じる。ユングがここで言っている神聖のようなものや、本当の意味での信仰心を私たち現代を生きる人が完全といってもいいほどなくしてしまっている事実に暗澹たる気持ちになる。

本文にこのような記述が多数見られる。

 

結局、われわれの世界のことがらは、心理学者が心の同一性と、“神秘的関与”と
呼ぶようなものを取り除いてしまったのである。 しかし、無意識の連想というこ
の後光こそが、未開人の世界に色彩的な、そして空想的な面を与えているのである。
われわれは、それをあまりにも失ってしまっているので、それにふたたび出会って
も気づかない。 それらのことは意識閾の下に保たれているので、たまたまそれら
が現れてきても、われわれは何かおかしいと言い張ったりする。 (p.57

 

有史以前から人類は超越的な存在(ひとりないし数人の)について、
あるいは来世についての観念を持っていた。現在にいたってのみ、
人間はこのような観念なしにやっていけると思っている。(p129

 

 われわれは、すべてのものからその神秘性やヌミノスを剥ぎ取ってしまった。
もはや聖なるものはなにも存在しない。(p143

 

私たちは本当に「神を捨て去ること」が発展だと、成功だと思っているのだろうか。

ユングはまた本文中で、人間の天才が、よりいっそう人類が危険になるような発明をすることにも言及し、これを「手っ取り早い大規模な人類の自殺」という。皮肉にも我々は発展と同時に、スイッチひとつで絶滅しかねない発明を抱え込んでしまっている。その事実を傍においやって、それでも自然を支配し、神を無視することこそが人間の生きる道だと思い込んでいる。

 

この本は上巻の第一章のみがユングの論文であり、わたしも一章しか読んでいないのだが、それでもこのユングの論文だけでも読む価値は非常にあると思う。